三岳黒沢の菩提寺・神護山大泉寺について
大泉寺は、旧三岳村の黒沢における菩提寺であり、別の記事でご紹介した覚明行者の菩提寺でもあります。
今回は、大泉寺についてご紹介します。
沿革
大泉寺は、臨済宗妙心寺派の寺院で、詳しい設立年は不明ですが、天正6年(1578年)との説もある、非常に長い歴史を有する古刹です。
現在の堂宇(殿堂)は寛政6年(1794年)に再建され、さらに明治24年(1891年)に建て直されたものと伝わっています。
本尊は十一面観音です。詳しくは分かっていませんが、文政6年(1823年)作の像ではないかと言われています。
また、十二面観音像を中心に、三十三番観世音、十王像が安置されています。
覚明行者との関係
最初にご紹介したとおり、大泉寺は覚明行者の菩提寺であり、境内には行者の供養塔があります。
この供養塔は天明9年(1838年)に建立されたとされており、数多く建立されている覚明行者の碑の中では最も古いもののようです。
木曽西国三十三所巡礼
西国三十三所巡礼というものをご存知でしょうか。
以下のサイトで詳しく説明されていますが、京都等を中心とした霊場を巡礼する信仰の旅で、約1300年前から始まっているとされています。
★サイト「日本遺産 西国三十三所観音巡礼」
★サイト「西国三十三所巡礼の旅」
この西国三十三所について、西国まで行かなくとも、木曽谷のうちで西国に行ったと同じ功徳があるとする「木曽西国三十三所霊場」が文政年間(1818~1831年)に設けられたようです。
その主導は、当時の妻籠村(現在の南木曽町)の光徳寺の住職だったようです。
大泉寺と、三尾に所在する普門寺の観音堂はそれぞれ木曽三十三所の十五番と十七番の霊場であったと伝承されています。
巡礼は幕末から明治にかけて盛んだったようで、納経帳(朱印帳のようなもので、霊場を巡ると印を記すものです)が現存しています。
巡礼は2~3回に分けて行われたようで、昭和初期までこのような巡礼の旅の歴史が続いた、とされています。
参考まで、木曽三十三所といわれている霊場を一覧でまとめました。
札所 | 場所(旧町村) | 寺院名 | 対応する三十三所 |
---|---|---|---|
一番 | 贄川村 | 観音寺 | 那智山 青岸渡寺 |
二番 | 奈良井村 | 大宝寺 | 紀三井山 金剛宝寺 |
三番 | 薮原村 | 極楽寺 | 紀州 粉河寺 |
四番 | 奈川村 | 臨照禅師 | 槙尾山 施福寺 |
五番 | 薮原 | 在郷田の上観音 | 難波藷雲山 葛井寺 |
六番 | 荻曽村 | 長谷観音 | 大和壺坂山 南法華寺 |
七番 | 菅村 | 極楽寺別当所 | 大和 岡寺 |
八番 | 宮越村 | 徳音寺 | 大和豊山 長谷寺 |
九番 | 原野村 | 林昌寺 | 奈良 興福寺南円堂 |
十番 | 上田村 | 井戸観音堂 | 宇治明星山 三室戸寺 |
十一番 | 福島村 | 興禅寺 | 山城深雪山 上醍醐寺 |
十二番 | 黒川村 | 東山観音堂 | 江州岩間山 岩間寺 |
十三番 | 末川村 | 瑞末庵 | 江州石光山 石山寺 |
十四番 | 西野村 | 源流庵 | 江州長等山 三井寺 |
十五番 | 黒沢村 | 大泉寺 | 山城 今熊野観音寺 |
十六番 | 王滝村 | 鳳泉庵 | 山城音羽山 清水寺 |
十七番 | 三尾村 | 普門院(現在の普門寺) | 山城 六波羅蜜寺 |
十八番 | 福島村(岩郷村) | 長福寺 | 山城 六角堂頂法寺 |
十九番 | 上松村 | 玉林院 | 山城 革堂 |
二十番 | 荻原村 | 大悲殿 | 山城 善峯寺 |
二十一番 | 須原村 | 定勝寺 | 山城菩提山 穴太寺 |
二十二番 | 長野村 | 天長院 | 摂州補陀洛山 総持寺 |
二十三番 | 殿村 | 池口寺 | 摂州応頂山 勝尾寺 |
二十四番 | 野尻村 | 妙覚寺 | 摂州紫雲山 中山寺 |
二十五番 | 与川村 | 阿弥陀堂 | 摂州御嶽山 清水寺 |
二十六番 | 柿其村 | 観音堂 | 摂州法華山 一乗寺 |
二十七番 | 三留野村 | 等覚寺観音堂 | 摂州書写山 円教寺 |
二十八番 | 妻籠村 | 光徳寺 | 丹波成相山 成相寺 |
二十九番 | 蘭村 | 観音堂 | 丹後青葉山 松尾寺 |
三十番 | 田立村 | 禅東院 | 江州竹生島 宝厳寺 |
三十一番 | 山口村 | 光西寺 | 江州姨綺耶山 長命寺 |
三十二番 | 馬籠村 | 永昌寺 | 江州 観音正寺 |
三十三番 | 湯舟沢村 | 天徳禅寺 | 濃州谷汲山 華厳寺 |
まとめ
三岳の古刹、大泉寺についてご紹介しました。
ぜひ訪れていただきたい名勝です。木曽三十三所も併せて訪問してみると、ロマンではないでしょうか。